第9話 カニじゃい!


 メガトロンは寝言を言いながらうつらうつらしていたが、その傍らには例の、ランページから取り上げた彼自身のスパークが置かれていた。ランページは、こっそり背後から取り返そうとする。が、失敗してスパークを押さえつけられ、悲鳴を上げるのだった。

 さて、サイバトロン側。敵の妨害アンテナを捜していたラットル・シルバーボルト・チータスは、呑気に現場に向かっていた。しかし、そこは地震の多発する地帯。そして、なんとサイバトロンの救命ポッドが現われる。それを知ったメガトロンはインフェルノを回収に向かわせる。カニのランページは不審に思い、自分も勝手に後へ続く。

 ところがそのポッド、出てきたのはいいが相当やばそうな雰囲気であった。データは壊れており、一見してまともな状態ではない。ランページは、ピンクにがちがち光るそのポッドを一目見て、さらに軽く触ってこの中身を気に入り、中から出てくるように叫んだ。そのとたん、ポッドは爆発し、周りにいた連中は吹き飛んでしまった。

 出てきた戦士を見て、ランページは目をぱちくりしていた。無理もない。出てきたのはなんともいえない異形の戦士だったのだ。温厚派のシルバーボルトは仲間になろうと手を差し出し、その背後からはメガ様から遣わされたインフェルノが銃を構える。と、新戦士は驚愕のあまりか恐怖からか、この世のものとも思えない声とピンクの光を撒き散らした。敵味方双方が吹っ飛んでしまったなか、ランページだけは意外に彼に親切で、誰も手出しはせん、わしが守ってやる、とそっと彼を戦いの場から連れ出すのだった。

 トランスミューテイト、とランページから名づけられた異形の戦士は、姿だけでなく、中身の方もかなり変わっているようだった。メガトロンからの通信で、変身を試みるも変身できない。メガトロンは役立たずと決めつけるが、ランページはもう一度チャンスをとせまる。

 トランスミューテイトは、まあシルバーボルトと一悶着あったあと、今度はサイバトロン基地へと向かうことになった。ライノックスが彼の分析を始めるが、結果は芳しくなかった。修復は不可能で、今すぐ機能を停止するのが一番だというのだ。その彼に、基地近くにまでひそかに追ってきたランページが通信を送り、こちらに来るよう優しく言い聞かせる。トランスミューテイトは壁を破って外へ出て行き、彼を心配するシルバーボルトが後を追い、鉢合わせたランページと戦闘になった。が、サイバトロン・デストロンどちらでもないトランスミューテイトは、2人のミサイルの間に入ってしまい、逃げるまもなく爆発してしまう。ランページは、ばらばらになった彼の頭を拾い上げ、絶叫するのだった。


さて。今回も重たい話だ。ため息がでてしまう。しかし、この様子から察するに、ランページは「メガトロンをいつか倒すための仲間」としてだけではない、友情を彼に無条件に感じていたようだ。そこが、なんだか心をゆすぶられる。ちょっきんなのカニさんにも、優しい心は十分にあったんだと思わせらせる、あまりに悲しいエピソードだ。

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