第5話 やめます!


 意外なことに、サイバトロンでもっとも正確に現状を把握していたのは、いつもダーダー言ってる恐竜だった。彼は、めずらしく真面目に考え込み、悩む。ダイノボットは、メガトロンがその野望のために着々と行動を起こしている事をよく理解していたのだった。そして、それがサイバトロンはおろか、デストロンを含めたすべての戦士にどう影響するのかも、うすうす察していたのに違いない。ダイノボット自身は、コンボイたちと共に戦いたかった。だが…。サイバトロンにこのまま留まっていて、メガトロンの野望を阻止することができるのか。そんな中、ダイノボットはラットルとともに、デストロンの陣地の調査を命じられる。

 電気ネズミタクシーにまたがって、ダーダ恐竜がごとごと行くと、デストロンが現われた。戦いはサイバトロンの楽勝かに思われたのだが、ですます野郎のとんだ妨害で、ダイノボットはビーストモードで倒れてしまう。そして、彼が目を覚ますと、そこはデストロン基地。ダイノボットはとっさにデストロンをなぎ倒し、メガトロンの胸にその剣先を突きつけたが。・・・彼は、意外なことを言い出した。すなわち、自分をデストロンに入れて欲しいと。ひざを折り、メガトロンにひざまずいた彼は、剣を返してメガトロンの方へと差し出した。

 そんな事態になっているとは知らないは、ダイノボット救出に向かう。その頃、デストロン基地では芝居がかったやりとりが続いていた。基地のコンピューター・ナビ子ちゃんは、ダイノボットをデストロンと認識するが、タランス始め他の連中が、そう簡単にこの裏切り者を信用するはずはない。ブラックウィドーはクイックストライクとの戦いを提案し、ダイノボットは快諾。ところで、クイックストライクと戦うことでなんでメガトロンへの忠誠が分かるのか? そこは謎だ。

 ともかく、一対一のバトルが始まり、戦いはダイノボットの圧勝に終わる。メガトロンは、かぁるく「やっちゃいな」、ととどめを刺すよう促すが、それに対するダイノボットの答えは、あのヘビサソリはいい腕だ、根性さえ叩き直せば使いものになると思うがな、というもの。メガトロンはこの答えに満足し、続けてゴールデンディスクはどこにやったと彼に問う。一枚は、ライノックスにやっちゃった、もう一枚は隠したと答えたダイノボットをひっつかむと、メガトロンはディスクの隠し場所へと向かった。しかし運良く、その光景をラットルが目撃していた。

 さて。岩山の山頂。ダイノボットは隠してあったゴールデンディスクをメガトロンに渡す。喜ぶメガトロンとは対照的に、ダイノボットは月を見上げて思いにふけっていた。メガトロンは、用済みダイノボットを処分しようとするが、そのときだ。追いついたラットルがメガトロンを撃った。ところが、そのラットルをダイノボットがぶっとばす。起き上がったメガトロンは、ダイノボットを誉めたが、当の本人は浮かぬ様子で、ラットルが呼んだ仲間が来る前に、引き上げようと提案する。が、メガトロンはあくまでネズミの始末にこだわった。誇り高い戦士のダイノボットだ。動けない相手にますます気乗りしない態度だったが、結局、倒れたラットルへと近づいていく。その剣を喉元に突きつけられたラットルは、やっぱりデストロンは死んでも治らないんだね、とつぶやいた。ダイノボットは、剣を振り上げ、突き刺そうと構えた。しかし。その剣先は不意にメガトロンへと向けられた。ダイノボットは、メガトロンと剣をあわせながら、貴様は野望に目が眩んでいる、このままではサイバトロンもデストロンも全滅だと怒鳴った。メガトロンは、さっさとサイバトロンへ帰れ、と吐き捨て、去っていった。そこに、いまさら。コンボイさんとシルバーボルトがやってくる。

 状況の説明を求めるコンボイさんに、ラットルくんは、ダイノボットはデストロンにお戻りになられたようだと言う。ダイノボットはそれを否定せず、自分はデストロンの戦士だと言い放ち、さらにメガトロンが勝利を手にしようとしているのを見て、勝ってビールかけに参加したいと思ったなどと説明する。だが、いまは、コンボイらと一緒に戦って絶対に勝ちたいと。たとえ戻れなくてひとりでも、メガトロンと戦うと。意見を求められたラットルは、いままでのお返しとばかり言いたい放題言った末に、ダイノがいないとさみしい、と彼を許す。コンボイもダイノボットの復帰を認めた。そのコンボイさんに、ダイノボットはいつにない真面目な口調で、どうしても話しておかなければならない大事な話があると切り出す。コンボイさんは、基地に戻ってからゆっくり聞くと答えるのだった。

 さて。ぱたぱた犬と空飛びゴリラは先に基地に戻っていった。残されたラットルは、ビークルモードに変身すると、ダイノボットを見上げて、乗ってくかい?とつとめて明るく尋ねた。ダイノがまたがると、とたんに真面目な口調になって、なんであのときとどめをささなかったのかとラットルは尋ねる。人から言われて何かやるのは嫌なんだ、とダイノボットはうそぶいたが、おまえは友達だしな、とも付け加えるのだった。鼻で笑ったラットルは、二度と裏切るなよダイノぼけ、と言うと帰路についた。その背にダイノボットを乗せて。

 

(まともな)話のなかでは、たぶん一番好きな話になるのだろう、これは。ラットルくんとダイノボットのとりあわせはただでさえ好きだが、この回のように関係が微妙になるのも面白い。でも、どうだろう。いまでも時々思うのだが、ダイノボットがみずからの喉元に剣を突き付けてきたとき、ラットルは、本気で彼はやるとちょっとでも考えたんだろうか? このへんの、セリフは間抜けな方向に走っていて、ちょっと惜しい。私には、ラットルが、ダイノボットが自分を殺そうとしている、と感じたかどうかは、疑わしく思われる。むしろ、あの状況で全然無抵抗だったラットルは、絶対ダイノボットはそんなことしないはずだと信じていたようにも思うのだ。

それから、ダイノボットはこのはなしで始終、デストロンに戻ると言っているが、それは、「勝ってビールかけに参加する」ためなんかじゃないように思われる。彼は野望に目が眩んだメガトロンを倒すために、デストロンにとにかく加わっておいて、その機会を伺おうとしたんだと私は思っている。だけど、その手に出るにしては、あまりにサイバトロンに情がうつっていましたな。ダーダ恐竜は。…たぶん、特に、ラットルにはな。

 

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